新人保健師がぶつかる壁【新人保健師 悩み】

保健師という仕事

私は保健師の資格を取得した後、病院に勤めることなくすぐに自治体で行政保健師として勤務しました。新人時代は、学校で学んできた理想とのギャップだったり、自分の能力不足を感じたり、辛い時期でもありました。

私の、新人時代の反省も込めて記事にしたいと思います。学生さんや新人保健師さんの参考になれば幸いです。

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保健師の専門性ってなんなのか・・・と悩む

行政で、もし働くとすれば「私、赤ちゃんは好きだけど、高齢者はちょっと・・・」と選ぶことはできません。 対象は全住民ですので。

今だと、多くの自治体では地区担当制ではなく、業務分担制で保健師の業務を分けているところが多いと思います。

なので、母子保健担当の部署であれば、母子保健のことを集中的に自己学習すればいいわけです。

ですが、私が新人で行政保健師をしていた25年ほど前はまだまだ地区担当制の自治体が多かったです。私が勤務していた自治体もそうでした。地区担当制のメリットはもちろんあります。業務分担制だと、母子はうち、高齢者はそちらの部署でお願いします、となりがちですが、地区担当制だとそんなことは関係なくトータルに家族や地域をみることができるからです。

デメリットは、知識、経験が足りない新人保健師時代は「自分の能力不足」を感じる場面が多く、「そもそも保健師の専門性ってなによ?」と投げやりな気持ちになってしまったりもします。

資格というのは怖いもので、「保健師」であるというだけで、同じ行政で働く他の行政職員や、住民の方々は専門家として扱ってくださいます。 保健師として働くうえでの必要な知識は学校で既に習得してきているだろうと見られているのかもしれません。

保健師国家試験に合格しても、育児相談には応じられないことが多い

 勤務して即戦力を求められるのが、「乳幼児健診」や「乳幼児の相談」の場面だと思います。新人だと母子保健の担当にまわされることが多いです。

実際に新人保健師が卒業後習得しているレベルは国家試験に合格する程度です。つまり、母子保健でいうと乳幼児の正常な発育や発達、栄養や歯などについての基本的な知識です。

私は、国家試験の模擬試験を作成する仕事をしていたこともあります。乳幼児健診の問題なども作っていましたが、あくまで教科書をもとに作成します。実際の現場では、教科書に載っていないような、育児のこまごまとした相談事を、お母さんたちからうけるわけです。

夜泣き、指しゃぶり、偏食、卒乳の仕方・・・など、子どもの発達に応じていろんな悩みを母はもちます。

お母さんたちからの相談事の答えは教科書には書いていない

窓口や、乳幼児の相談会におとずれるお母さんたちの悩みや心配事の答えは、教科書には書いてありません。高い金額をだして保健医療関係の専門書を購入したりもしましたが、案外、専門書には書いていない相談が多いのです。

では、何に頼るのか・・・・。結局は「育児書」です。相談におとずれるお母さんたちも読んでいる『育児書』です!これって、専門職なの?なんか変!と思いながら育児書に蛍光ペンで印をつけてました。

インターネットの掲示板でこんな書き込みをみたことがあります。「はいったばかりの新人保健師さんが、育児相談のときの担当者だった。相談しても、育児書に書いてあるようなことばかりで、何も役にたたなかった」というものです。

おそらく、私もそんな書き込みと同じ新人保健師だったと思います。掲示板に書き込んだ方は、正直ハズレをひいてしまったかも。せっかく時間をとって、相談におとずれたのに、当たりやハズレがあっては本来はいけないのです。卒業後の教育がしっかりしている自治体ならいいのかもしれません。

新人時代は知識を詰め込むことにいっぱいいっぱいになる

新人保健師が担当することが多い育児相談は単に知識があれば対応できるわけではありません。

しかし、さすがに新人保健師もすぐに気がつきます。育児書から得た知識を1問1答で答えるのは「相談」とは違うと。

お母さんがとても育児不安が強い時期には、次々くる育児の具体的な方法や、疑問にひとつひとつ答えてあげるのが必要な時期も確かにあります。また、来所者が多い自治体では数をこなすために新人に限らずそういう対応になりがちです。

ですが、本来、保健師の仕事は何なのか・・・「セルフケア能力を高める」のをサポートする人です。

育児不安が強いお母さんは「自分のやり方に自信がない」「初めてのことに不安」なため相談に訪れます。「きちんと子どもを育てたい」というまじめな方も多いと思います。

ぶっちゃけ、子どもって「育てるものでなく、育つもの」とも言われています。相談におとずれたお母さんたちに自分に自信をもって帰ってもらえればいいわけです。

「お母さん、がんばってますね。」「毎日、大変ですよね」「工夫してやっていますね、それでいいですよ!」という声かけが必要です。

お母さんたちの話に、共感、傾聴する「カウンセリング技術」や、「コーチング技術」が、知識の押し売りよりずっと大切になります。

さきほど、育児書を読んで育児相談に臨むのが専門職なのか。。。という否定的なことを書きましたが、これはこれで、必要なことと思います。相談対応者はお母さんたちより育児の一般的な知識は習得していることは前提です。また、一般育児書には書いていない教科書的な内容も必要です。当たり前ですね・・・(苦笑)

当然ながら、保健師の保健指導は単なるカウンセリングとは違うもので、カウンセリングの手法をいれつつ、知識も伝達するというものだからです。

心理カウンセラーのおこなう心理カウンセリングは、カウンセラーは「自分の考えは伝えない」というのが原則なのが保健指導との大きな違いです。

周りからはプロフェッショナルを求められる。だけど、プロフェッショナルというよりはジェネラリストなのが保健師。

管理栄養士や歯科衛生士、精神科医、理学療法士など・・・いろんな保健理療福祉の専門職があります。

栄養士さんに「栄養のことはわかるけど、それ以外のことは全部、保健師さんに相談してね!と(相談にきたお母さんに)答えておきましたから」 と、言われたことがあります。この栄養士さんの住民の方への回答は間違ってはいないのですが、新人時代は、内心「栄養士さんはいいな~」と思いました。

だって、「栄養」のことだけ勉強すればプロですよね?!ってこと。

保健師は、「栄養」のことも含め、健康のこと全てについてが守備範囲です。早く一人前になりたいと願う新人保健師時代は、そのゴールが果てしなく遠く感じられます。

結局、保健師はいろいろな分野のことを広く知る必要はあるものの、広く浅くにとどまります。

保健師は「赤ちゃんの専門家」「高齢者の専門家」というわけではないのです。『スペシャリストというより、ジェネラリスト』だからです。

『救急看護のプロフェッショナル』とかかっこいいですよね。保健師場合、○○のプロフェッショナルにはなり得ないでしょう。異動がありますからね。自分がいろんな難題を解決できたらかっこいいですけどね、保健師は他職種とチームで動くときの調整能力のほうが大切だったりします。

保健師は、住民の方の健康課題を自分のところで完結させなくてもいいんです。必要な専門職につないだり、より専門的な相談の場を紹介することも役割です。

住民に頼られる存在になりたいと、若いときほど使命感に燃えます。でも、自分ひとりでは能力だけでなく、職種のあり方として難しいのだと現場で気がつきます。

そこからが、スタートなのかもしれません。保健師という職種の特異性を理解したうえで、保健師を目指す方はチャレンジしてみてください。

私の全くの個人的見解から「保健師に臨床経験は必要なのか」という記事も書いてみましたのでよろしければご覧ください

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